地域ブランド戦略とは
地域ブランド戦略の構築
農林水産物の地域ブランドづくりには、5年先、10年先を見据えたビジョンに立脚した手法と商品開発が欠かせません。1年目の戦略策定から2年目の地域ブランド育成の活動、そして3年目以降の持続的発展可能な展開と、3年以上かかる長期的な取り組みによって、消費者の心をつかむことができるのです。
1年目:戦略策定
現状分析
地域ブランド化は、まず産地の現況を客観的に把握し、活用すべき地域資源、克服すべき課題を抽出することから始まります。市場全体の傾向、競合相手との比較、産地内の動向についての検証も必要です。
1. 地域資源を発掘・再評価する
市町村と農林水産業団体が中心になって、地域産業の問題や課題を再認識するとともに、地域ブランド化にふさわしい地域資源を発掘します。
2. 事業のキーパーソンを探す
地域資源を見出したら、当該事業の団体や生産者にアプローチして、事業の将来について詳しいキーパーソンを探します。キーパーソンは団体の長とは限らず、むしろ次代を担う若手を探すことが重要です。
3. 事業環境を検討する場をつくる
キーパーソンが見つかったら、参画事業者を集めて検討の場をつくります。市町村と連携して、地域ブランド推進協議会を設置するのがベストです。
4. 事業環境の現状を分析する
産地は、卸売業や小売業を経由して商品を販売してきたため、消費者ニーズの情報収集が遅れている場合があります。そこで、ターゲットとしている市場はどこか、また市場規模に変化はないか、時代の流れにより市場そのものが縮小していないか、などを調査分析します。
戦略の策定
事業環境の現状分析を終えて、関係者が問題意識を共有できるようになったら、まずは今後の活動の戦略を策定しましょう。
現状把握を踏まえたうえで展開分野や商品の選択、産地の強みを検証するとともに、売上目標と経済波及効果も検討し、取り組む展開分野・商品を決定します。
戦略を策定したら、実施計画を立て、予算、事務局、委員会およびワーキングなどのメンバーをリストアップして、検討組織を立ち上げます。団体が中心となり、国や地方自治体に働きかけて、事業の支援メニューを確保して、活動予算の確保に取り組みます。
2年目:地域ブランド育成の活動
・ターゲットの設定と検証
事業開始の段階で、ターゲットと検証作業を設定します。性別、年齢層、利用のされ方など、詳細かつ具体的に設定しましょう。「SWOT」(Strength:強み、Weakness:弱み、Opportunity:機会、Threat:脅威)分析などを利用し、商品の特性を洗い出すことが重要です。
・ブランドストーリーの構築
消費者を惹きつけるブランドとしてのストーリー性をアピールします。時代のトレンドがブランドのストーリーのなかに自然に盛り込まれていることが大切です。
・ここにしかない商品の開発
ターゲットに受け入れられるのは「ここにしかない」商品です。外部の専門家を起用して、地域の素材を活用しながら、新しい使用法や加工品を開発します。
・ターゲットを絞った情報発信
展示会出品、流通業者への訪問、専門誌や雑誌、ウェブサイトなどの媒体を活用して、ターゲットのニーズにあった商品であることをアピールします。
・市場調査で商品を評価
展示会に出展して、市場の評価を受けましょう。適切な展示会の選択と展示の際の事前準備が、市場調査の成果に直結します。
・販路開拓と営業窓口の一本化
いよいよ商談です。生産手配や管理責任があいまいなままだと、事業機会を逸することが多々あります。受注と納品について、責任体制をしっかりと確立することが求められます。
・生産体制の整備
受注しても、生産能力がともなわず事業機会を逸することがあります。生産者だけでなく、地域内の農商工で連携するなど、生産・加工・流通の体制づくりに取り組みます。
・知的財産の管理
デザイン、特許、商標、地域団体商標などブランドの知的財産の管理や品質管理、運用ルールの規定を行うとともに、ブランド展開の成果と課題を検証するための組織を設置します。利益配分のルールも定めましょう。
3年目以降:持続的発展可能な展開
事業の継続的な発展に向けて
一般的に地域ブランドの構築には5~10年ぐらいかかるといわれています。商品の売上目標、生産計画、資金調達の方法、参画事業者の決定と組織のあり方についての明確な方針など、5~10年後を見据えたビジョンをもとに、地域ブランド化の取り組み4年目以降の事業計画を作成します。
プロデューサーの役割
いかに洗練された事業計画であっても、それを"絵に描いた餅"に終わらせずに確実な成果を残すためには、事業をけん引していくプロデューサーが不可欠です。プロデューサーは、商品のコンセプトを創造するだけではなく、展示会への出品、流通経路づくり、そして情報発信までトータルで引き受け、新事業を開発から成功まで一貫して支援する専門家です。数多くの事業者が関わる複雑な事業において、事業全体をまとめ、各専門部署を的確に推進していくのもプロデューサーの役割です。
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